マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

「きこかけく」から「いろはにほへと」そして「あいうえお」へ

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小学3年生の娘は、平仮名の「を」を書くのが苦手で、よく鏡文字になってしまいます。

今日は1年生の頃に使っていた、五十音図を久々に出して一緒に練習していました。

普通に練習するだけではつまらないと思い、「いろはにほへと」の順番で練習したり、「きこかけく」の順に書いてもらいました。

今回は、五十音図について書いてみます。

 

 

 

 

五十音図

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五十音図(もしくは五十音)とは、平仮名やカタカナを母音に基づき縦に5段、子音に基づき横に10行ずつ並べた「音節表」のことです。

小学生が国語の授業で必ず学ぶ、日本語の基本だと思います。

一般的に五十音図や五十音と呼ばれていますが、小学校で使われている五十音図を数えてみると全部で46文字しかありません。

濁音や半濁音などを入れると、50文字以上になってしまいます。

これは、1946年に現代仮名遣いが導入されてから、や行やわ行の文字が一部空白となったり、置き換えられたのが原因です。

 

五十音図の起源

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五十音図は、古代日本に伝わった文字や漢字を、日本語にある読み方に置き換える中でつくられたと考えられています。

五十音図が成立するのに大きな影響を与えたのが、奈良時代に仏教と共に伝わった「悉曇(しったん)」と「反切」です。

悉曇は、五十音の各段・各行の並び方に影響を与えました。

反切は、子音と母音の組み合わせという考え方に影響を与えています。

 

悉曇(しったん)

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悉曇とは、古代インド文字の発音をまとめた「音節表」のようなものです。

7000語を超える文字が、母音と子音の組み合わせで合理的に配列されたものでした。

古代インド文字は、母音だけでも16種類ありました。

平安時代には、この悉曇を元にして日本語の音を並べるようになりました。

当時は

きこかけく

しそさせす

ちとたてつ

いよやえゆ

みもまめむ

ひほはへふ

ヰをわえう

りろられる

という音図がつくられました。

これは、京都にある醍醐寺が所蔵している『孔雀経音義』という書物に残された音図です。

孔雀経音義は、孔雀経の語句や意味について解説した書物ですが、この書物の巻末に音図が付けられていました。

現在日本に残されている、最古の音図です。

 

孔雀経音義の音図と五十音図の違い

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孔雀経音義の音図を見ていると、いくつかの点に気づきます。

まず、肝心の「あいうえお」の文字が全部ありません。

母音の順番は

きこかけく(ki ko ka ke ku)といった形で、「いおあえう」の順番に並んでいます。

行順は「あかさたなはまやらわ」ではなく、「かさたやまはわら」の順に並んでいます。

 

音図の変化

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平安時代の『孔雀経音義』から各時代を経て、音図が研究され続けました。

まずは基本となる母音が抜き出され、「あいうえお」ができました。

そして発音のしやすい順に子音の配列が考えられ

「かがさざただなはばまやらわ」となりました。

これにあ行を加え、濁音を除いた

「あかさたなはまやらわ」

が出来上がりました。

 

江戸時代の五十音図

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現在使われている五十音図は、悉曇に大きな影響を受けています。

この悉曇は、「あ」で始まり「ん」で終わっていたために、五十音図も「あ」で始まり「ん」で終わるようになったと考えられています。

五十音図が使われるようになったのは、江戸時代からです。

様々な国学者達の手によって、現在の五十音図がつくられました。

当時は「五音(ごいん)」や「五音図」「仮名反(かながえし)」「五十聯音(いつらのこゑ)」などと呼ばれていました。

 

手習い歌と五十音図

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五十音図が日本中で使われるようになるのは、明治時代になってからです。

江戸時代の寺子屋では、手習い歌が使われていました。

手習い歌には「いろは歌」「あめつちの歌」「大為爾(たゐに)の歌」といったものがありました。

これらは、歌を丸暗記することで仮名文字を全部覚えることが目的でした。

特に有名な手習い歌に、いろは歌があります。

いろは歌とは、仏教の諸行無常の教えが込められた歌です。

明治時代になって、政府が「廃仏毀釈」の方針を取ったため、いろは歌が使われることがなくなり、五十音図が使われるようになりました。

 

子音と母音とで分類した「あいうえお」の五十音図は理路整然としていますが、何となく無機質で暗記しにくい気もします。

手習い歌のように、仮名を網羅した上で意味が込められたもので暗記する方が、興味が湧いてくるような気がします。

 

 

 

参考文献

はじめて読む日本語の歴史

図説 かなの成り立ち事典

かな―その成立と変遷 (岩波新書 青版 679)

日本語の奇跡―「アイウエオ」と「いろは」の発明 (新潮新書)