マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

「気をつけ!」の号令で、手をももの前に置く江戸市民と、手を前に向ける明治の小学生

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自宅の近くに新しいマンションが建ち始めているのですが、建設現場では職人の方達が毎朝朝礼をしています。

私が毎日家を出て、その会社の前を通るのは、ちょうど朝礼が終わる時間が多いようです。

朝早くから気合の入った点呼もあって、こちらも目が覚める思いです。

最近、そんな朝礼をよく目にしているので、今回は立ち姿について書いてみます。

 

 

 

 

「気をつけ」の姿勢

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「気をつけ!」

と号令があれば、かかとをつけ、背筋を伸ばして両手を脇に添える姿勢をとると思います。

この立ち姿ですが、日本では明治時代から始まった姿勢になります。

 

江戸時代までの立ち姿

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江戸時代の立ち姿は、足はかかとをつけるだけなく、つま先もつけて立つものとされていました。

また、手も体の横に添えるのではなく、ももの前に掌を添えていました。

これは、当時の姿勢は座った時の姿勢が基本となっていたからです。

目上の人の前では、正座するのが正しい座り方でした。

 

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立ち姿は、正座の姿勢に準ずるものと考えられていたので、手の位置は正座した時の位置と同じように、ももの前にあるのが正しい立ち姿でした。

実際に立った状態で、手をももの前に添えようとすると、肩がすぼんで背中が少し丸くなります。

江戸時代頃までは、将軍や殿様など高貴な人の前では体を小さくし、萎縮した姿勢を取ることが礼儀とされていました。

これが、古来続く日本の姿勢に対する考え方です。

 

西洋文化と立ち姿

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江戸幕府が崩壊し、西洋文化が入ってくるようになると、この立ち姿が嫌われるようになります。

欧米人は全て、手を体の横に添えて背筋を伸ばした状態で立っていました。

欧米人に比べ、日本の伝統的な立ち姿が卑屈に見られるようになってしまいます。

明治時代になると、日本中に学校が設立されます。

それまでの日本では、寺子屋で読み書きそろばんが教えられる程度でした。

小学校では、欧米の教育課程に則り、体育も教えられるようになります。

教える側の先生も、何を教えればよいのかよく分かっていませんでした。

そのため、教え方に関する本も多数出版され、その中に欧米式の立ち姿についても解説されるようになります。

 

明治時代の立ち姿

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明治7年に出版された『体操図解』という本があります。

この本で一番最初に書かれているのが「気をつけ」の姿勢についてです。

本によると、当時の気をつけは、まずかかとを揃えて立つこととされています。

腕を体の横につけるようにし、背筋を伸ばして立つのが、正しい姿勢とも解説されています。

今の「気をつけ」と異なるのは、掌の向きです。

「掌ヲ前ニ向ケ」と書かれており、指を真っ直ぐ伸ばした掌は、前から見えるように向けるのが正しい立ち姿とされていました。

これは、明治20年に発行された『中学校師範学校 教科用書 普通体操法』にも同じことが書かれています。

明治時代の気をつけは、掌が前を向いていないといけないものだったようです。

 

掌を前に向ける理由

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掌を前に向ける理由は、掌から気が発せられていると考えられていたからです。

先生から発せられる気合の入った号令に対し、掌を前に向けることで気を発し返し、応えるという意味がありました。

 

明治時代の号令

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明治時代、「気をつけ!」という号令は使われていませんでした。

「用意セヨ!」という号令が一般的だったようです。

これは、次の動作が始まるから、気合を入れて用意しておくようにという意味が込められた号令でした。

号令の言葉は、時代が進むにつれ「用意セヨ!」から「気をつけて」、更に「気をつけ」に変化します。

「気をつけて」が使われていたのは、短い時期だけだったようです。

どんなに気合を入れて叫ぼうとしても、「気をつけて」だと、なかなか気が入らなかったような気がします。

 

 

 

参考文献

体操図解

新選体操図解

小学必携体操図解

普通体操法