マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

陰陽道に由来する言葉「ウケる」と、幕末の「こわい」出来事

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講師の仕事をしているのですが、話の内容がウケるとどんどん本来の講義の内容から脱線していまします。

脱線した時に話す内容は、ほとんどがこのブログに備忘録として書いているネタです。

ブログを運営しているという事は、周囲の人たちに秘密にしているわけではないので、検索からこのブログを見つけてくれる方もいらっしゃいます。

今度の講義でも、内容に沿ったウケる話がないか、備忘録の中から今日も検索していました。

今回は、ウケるについて書いてみます。

 

 

 

 

「ウケる」の語源

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ウケるという言葉は、「有卦に入る」という言葉が語源になっています。

この言葉は、飛鳥時代に中国から仏教と共に伝来してきた、陰陽道の言葉です。

飛鳥時代から平安時代にかけて、陰陽道が政治に深く関わっていました。

安倍清明をはじめ、時代ごとに最強の陰陽師と呼ばれた人々は、朝廷に重用され、変事がある度に占いをしたり、怨霊を鎮める祀りごとを行いました。

占いの方法はいくつもありましたが、占いの結果が運気上昇をもたらすと出た場合は

「もうすぐ有卦に入るので、7年間は良い事が続くでしょう」

といった形で伝えられていました。

現在使われている「ウケる」は、「うけがいい」という意味で、「評判になる」「面白い」という場面で使われます。

漢字は「受ける」があてられる場合が多いと思います。

インターネットを検索すると、「ウケる」の語源は、芝居などで「(客から)拍手・喝采をうける」という楽屋言葉が語源になっていると書かれた記事がたくさんあります。

調べた限り、出展が明記されている記事はなかったたのですが、「ウケる」は陰陽道の「有卦に入る」が語源となっており、時代と共に「受ける」「受けがいい」という意味でも使われるようにになっていったという説が正しいと思われます。(出展については本文最後に明記)

 

「こわい」という言葉

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「こわい」という言葉があります。

「怖い」や「恐い」という字があてられていますが、本来は「固く突っ張ること」という意味でした。

小豆や山菜を入れて炊いた米をオコワと呼ぶのは、その名残りです。

恐怖によって、筋肉が固く突っ張ることから「怖い」という字があてられて、恐ろしいという意味になったとされています。

 

ウケる黒船

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幕末の1853年、浦賀に黒船が現れた際、庶民にはウケていました。

浦賀沖を見渡せる丘の上には人だかりができ、海岸では黒船相手に商売をしようとする人もいました。

1854年には、ロシアの軍艦ディアナ号が、現在の兵庫県神戸市にある和田岬に現れます。

浦賀沖に黒船が現れた際と同様、浜には見物客が集まりました。

地元の若い男たちは威勢の良い姿を見せようと、10人ほどが集まり、伝馬船に乗って黒船に近づこうとします。

ディアナ号の乗組員はそれを見つけると、笑顔で手招きし、船に迎え入れたそうです。

船に迎え入れられた男たちは、最初は恐怖で縮み上がっていたのではないでしょうか。

そんな男たちに、乗組員たちは菓子や砂糖を振る舞って歓迎したそうです。

これを聞いた地元の人たちは、女性や子供が我先にと乗船し、指輪やガラス細工を貰ってキャーキャー騒いだそうです。

ロシアからやってきた黒船は、神戸の人々にウケまくっていました。

 

こわい黒船

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その一方、大坂町奉行所の役人や関西の諸藩は、恐怖と緊張で「固く突っ張った」状態でした。

和田岬や神戸、大阪の町に兵が配備され、

「動揺することなく、直ちに六甲山に避難すべし」

というお達しが、庄屋を通じて出されます。

このお達しが原因で、阪神間は緊迫した雰囲気に一変します。

事情が分からない遠方の人達は、

「黒船が和田岬に攻めてきた」

と、噂が噂を呼んで恐怖のどん底にあったそうです。

黒船を「怖がった」役人たちは固く突っ張ってしまい、黒船を歓迎した庶民は「ウケる」状態だったんだと思います。

 

伝染する「ウケる」と「こわい」

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「ウケる」話も「こわい」話も、人から人へ伝わっていくと、話がどんどん膨らんでしまいがちだと思います。

幕末、人づてに黒船の噂を聞いた人達は、恐怖で逃げ出そうとしたのか、自分の目で確かめてみたいという好奇心に駆られたのか、「ウケる」黒船と「こわい」黒船のどちらの情報を先に知ったかで、反応は違っていたのではないかと思います。

 

 

 

参考文献

日本語源大辞典

日本の言葉の由来を愛おしむ―語源が伝える日本人の心―

ことばの由来 (岩波新書)

新明解 語源辞典

逆説の日本史18 幕末年代史編1/黒船来航と開国交渉の謎

新装版 酔って候 (文春文庫)

幕末外交と開国 (講談社学術文庫)