マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

「支払い」と「お祓い」が同じ意味だった、平安時代の市場における貞操観念

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先日の土曜日に早起きして、前々から行きたかった大阪中央卸売市場の寿司屋「ゑんどう」に行ってきました。

www.endo-sushi.com

握り寿司ではなく、口の中に入れるとほろりとくずれる「つかみ寿司」という寿司を出してくれます。

1皿にはおまかせで寿司が5貫載ってくるのですが、それを好きなだけ追加していけるというシステムの店です。

久々に、美味しい寿司を堪能して、市場の雰囲気を楽しむことができました。

そんなわけで今回は、古代日本の市場について書いてみます。

 

 

 

 

市の意味

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漢字の「市」は、中国では漢音で「シ」、呉音で「ジ」と発音していました。

「大勢の人が物品の売買のために集まる場所」という意味です。

これが転じて「人の集まる繁華街」という意味になり、大阪市や福岡市といった行政区の呼び名にも使われるようになりました。

 

市の語源

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「市」は、日本語で「イチ」とも読みます。

イチの語源は「斎く地(いつくち)」の略だと考えられています。

「斎く(いつく)」とは、「清める」という意味で、清められた地が「市」になります。

 

清めの力

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奈良時代頃から、都や地方都市では定期的な市が開かれるようになりました。

市を開く際、市場を清めるために「市場祭文(いちばさいもん)」というものが読み上げられていました。

市場は清められた聖なる場所とされていたので、そこに並べられた品物も、神の力で清められていました。

当時の市場には、誰かが使った古道具も並べられていましたが、これも市場で買えば、前の持ち主の魂や想いが清められ、新品同様となると考えられていました。

 

道具に付着する魂

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平安時代頃は特に、道具や物には前の持ち主や造った人の魂が付着していると考えられていました。

また、当時物を盗まれた際に取り戻すためには、市場で探して買い戻すという方法が一般的でした。

盗んだ泥棒も、盗品を売りとばさなければ金にならないので、市場に並べられることが常でした。

もしも盗まれた被害者が、盗まれた品を市場で見つけた場合は、市場の聖なる力で泥棒の魂が清められ、盗品を安心して取り戻すことができたと言われています。

被害者が盗まれた品を市場で取り戻す際は、お金を支払って買い戻していました。

 

支払いとお祓い

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現代の常識で考えると、自分が盗まれたものにお金を払って買い戻すなんて、馬鹿馬鹿しく思えるかもしれませんが、当時はお金を払うことに特別な意味がありました。

お金を支払う「払い」は、神社で行うお祓いの「祓い」と語源も意味も同じだったため、平安時代頃は「支払う」ことで「お祓い」と同じく、品物が清められると考えられていました。

 

市場では不倫も清められる

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平安時代の951年に編纂された『大和物語』には

色好みの男は、市場で人妻をあさって楽しんでいた

といった話が書いてあります。

これも、市場が持つ「清め」の力を信じていた時代だからこそできた事です。

当時の考え方からすれば、人妻には夫の魂が付着しているということになります。

それも市場であれば清められるので、人妻は市場の人気商品とされていました。

男性の方も、支払いをすればその行為を清められると考えられていました。

現在の価値観や倫理観では「不倫」ですが、当時は聖なる場所と考えられていた市場で「支払い」という取引の上で成り立っていた関係のようです。

 

遊女街ができた理由

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鎌倉時代以降、聖なる場所である市場は、大きな寺社の門前などに常設されるようになります。

女性たちも、聖なる場所でその場限りの関係を持つことでお金を稼ごうとする人が増え、遊女街ができてきます。

京都や大阪の古い寺社の周囲には、昔ながらの出会い茶屋や遊女屋の名残が残っているのが多いのには、こうした理由があったようです。

 

 

 

参考文献

平安朝の生活と文学 (ちくま学芸文庫)

「昔の名残」が見えてくる! 城下町・門前町・宿場町がわかる本

中世の非人と遊女 (講談社学術文庫)