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マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

日本人の本質を知るためには、武士道や儒教ではなく「結び」を知ることが大切なのかもしれない

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数か月間交渉を続けていた仕事があったのですが、今日ようやく結論を出すことができました。

ようやく実を結んだ交渉の最後に、

「妥協で終わることなく、妥結できたことは大変喜ばしいことです」

といった趣旨の挨拶がありました。

妥協とは、互いの主張を幾分かずつ譲り合って、一つの結論・取決めを導き出すという意味です。

対して妥結とは、利害関係で対立している者が、互いに折り合って約束を結ぶという意味です。

そんな挨拶を聞いて、結ぶという表現が気になったので色々と調べてみました。

今回は、日本人と結びの関係について書いてみます。

 

 

 

「結び」の意味

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身の回りには、たくさんの「結び」があります。

調べてみたら、生活の中に「結び」という表現がこれだけ浸透しているのは、日本以外の国ではほとんどないようです。

 

「結び」を大辞林で調べると

①結ぶこと。また、結び目。 「蝶ちよう-」

②人と人とが交わりをもつこと。 「 -の杯さかずき」

③しめくくること。最後。終わり。 「 -の一番」 「 -の言葉」

④握り固めた飯。にぎり飯。おむすび。むすび飯。

⑤文法で、係りの語に呼応して文を終わらせる語形をいう。 → 係り結び

⑥〘数〙 二個または二個以上の集合について、そのうちの少なくともどれか一つの集合に属する要素全体から成る集合。合併集合。和集合。 ↔ 交わり

と解説されています。

 

「結」が含まれた言葉

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束ねて1つにまとめる、むすびつける、ゆわえるという意味で結を使う言葉に、「結縄」「結髪」「結束」「連結」といったものがあります。

ばらばらのものが、つながりあって1つにまとまるという意味では「結氷」「結晶」「結集」「凝結」「凍結」といった言葉があります。

約束してかたく結びつく、契るという意味では「結盟」「結誓」「結党」「結社」「結婚」「団結」といった言葉があります。

組み立てて1つのものを作るという意味では「結構」「結界」「結成」があります。

1つのものができあがるという意味で、「結実」「結果」という言葉があります。

しめくくる、終わりになる、むすびという意味では「結末」「結了」「結局」「結論」「結願(けちがん)」「終結」「完結」「妥結」「締結」「帰結」「起承転結」などがあります。

 

結びの語源

結びの「ムス」とは

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むすびの語源は「産霊(ムスヒ)」と言われています。

ムスヒは、「ムス」と「ヒ」に分けることができます。

ムスには、産むという意味があります。

古来日本では、「産む」ではなく「産むす(ウムス)」と表現していました。

ムスは、ウムスのウが取れたもので、自然に発生するという意味があります。

ムスを使う言葉の中には、「苔むす」といった今も使われる表現があります。

 

結びの「ヒ」とは

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ヒは、霊または霊的・神秘的な働きのことを意味しています。

このヒと呼ばれる霊は、空っぽという意味の「ウツ」から抜け出し、現実を意味する「ウツツ」の世界に現れるとされていました。

霊であるヒが、自然に発生する(産むす)という、「ムス」と「ヒ」を組み合わせたものが「結び」の語源になります。

 

結びつき

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ムスビは、「結び」だけでなく「産霊」「生霊」とも書きます。

言葉の成り立ちから考えると、結ぶという意味は霊を具現化することと同じ意味になります。

神道においては、万物は「むすひ」の働きによって生じ、発展すると考えられています。

万物に神が宿ると考えられていた古代日本では、人と人の結びつきだけでなく、物の結び目にも神の心が宿っていると考えられていました。

古代の日本人は、神や仏を敬うと共に、あらゆる物との結び付きに日々感謝して生きていたんだと思います。

 

神との結びつき

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結びを大切にする日本人にとって、あの世とこの世の結界を示す「しめ縄」は、結びの代表的なものだったのかもしれません。

祭りの神輿や山車も、様々な結びやしめ縄で飾られます。

祭りに参加する人も、ハチマキや帯を結びます。

また、お祭りの掛け声も、結びと関係しています。

「ワッショイ」は、和合しよう、「ソイヤ」は、添い合おうが縮まった言葉だと言われています。

物だけでなく、言葉でも結びが大切にされていたんだと思います。

 

人との結びつき

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息子、娘という言葉があります。

息子や娘は、夫婦が結びついて産まれた子どもです。

「ムス・コ」「ムス・メ」と単語を分解すれば、ここにも結びの「ムス」が含まれていることになります。

また、昔の農村では、「結(ゆい)」「講(こう)」といった制度がつくられ、お互い助け合う制度がありました。

 

結(ゆい)

「結(ゆい)」とは、田植えや稲刈り、家の普請などで労働力を融通し合う、共同生活集団のことです。

結婚の際に行われる「結納」は、この「結」から出てきた言葉だとされています。

2つの家が和して結合する「結」に用いる品物「ユイノモノ」のことを指しています。

 

講(こう)

「講(こう)」は、特定の神仏を信じる信仰者で作られた集団のことです。

講員の家を宿として神仏に祈願した後、一同で飲食こともあったようです。

 

日本人の本質

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結や講で人との結びつきを強めた反面、ルールを犯した者には、交際や出入りを禁止する「村八分」が科されていました。

古来から日本では、信仰上の罪よりも、団結を乱す罪が厳しく罰せられてきたようです。

神や人、物との「結び」や「結びつき」を大切にする国民性だったからこそ、欧米のように宗教がモラルの規範になるのではなく、道徳が行動の規範になってきたんだと思います。

 

日本人の本質は、武士道や儒教にあるのではなく、「結び」にあるような気がします。

 

参考文献

大辞林 第三版

広辞苑 第六版 普通版 KOJIEN-S-F

結び目のはなし (アウト・オブ・コース 1)

結びの文化―日本人の知恵と心

お守りライフ-神仏と共に生きるライフスタイル: お守りと共にあらんことを!

むすひ

生活ごいっしょに―ふれあいからつながりむすびつきへ

中世民衆の世界――村の生活と掟 (岩波新書)

「日本の神様」がよくわかる本 八百万神の起源・性格からご利益までを完全ガイド (PHP文庫)

「日本人の神」入門   神道の歴史を読み解く (講談社現代新書)