マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

冠婚葬祭のしきたりには、あの世とこの世の行き来を意味したものが多い気がする

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昨日、帯祝いに関する記事を書きました。

 

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記事を書いた後に、冠婚葬祭の風習を解説した古い本を何冊か読んでいたのですが、面白い発見がありました。

日本人にとって、冠婚葬祭は死と再生を意味する大切な行事なのかもしれません。

今回は、あの世とこの世の行き来を意味している、冠婚葬祭のしきたりについて書いてみます。

 

 

 

あの世とこの世の往来

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古来、日本人にとって、あの世とこの世は全く別の世界ではなく、行ったり来たりする身近な世界と考えられていました。

『古事記』では、男神のイザナギノミコトが、死んだ女神で妻のイザナミノミコトに会いに、黄泉の国へ赴く逸話があります。

そこで「決して覗いてはいけない」というイザナミとの約束を破って見てしまったのは、腐敗して蛆にたかられ、八雷神(やくさのいかづちがみ)に囲まれたイザナミの姿でした。

その姿に驚いて、イザナギは地上に逃げ出します。

追手を追い払い、無事に地上に逃げ戻ったイザナギは、黄泉国の穢れを落とすために禊(みそぎ)を行なうと、様々な神が生まれました。

左眼を洗った際に生まれたのがアマテラス(天照大神)、右眼を洗った際に生まれたのがツクヨミ(月夜見尊月読命)、鼻を洗った際に生まれたのがスサノオ(建素戔嗚尊速)とされています。

 

神話に語られるように、日本人にとってはあの世とこの世は行き来するものであり、死と再生は身近なものとして考えられていたようです。

 

冠婚葬祭と「あの世とこの世」

帯祝いと魂

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出産に関する儀式では、「帯祝い」があの世とこの世の引っ張り合いを意味しています。

帯祝いとは、妊娠5か月目の戌の日に、妊婦が腹帯を締める儀式です。

腹帯を締めないと、赤ちゃんはふとしたきっかけであの世に引っ張り戻されると考えられていました。

腹帯を締めるのは、妊婦の体に赤ちゃんの魂をしっかり結びつけるためという意味があったようです。

 

結婚と白

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結婚に際しては、花嫁は実家の娘として一旦死んで、嫁ぎ先の嫁として新しく生まれ変わると考えられていました。

日本の伝統的な花嫁衣装は、白無垢、角隠し、綿帽子姿です。

これは、赤ちゃんに着せる白い産着や、死装束と同じ白の衣装です。

結婚式で花嫁の顔を覆うのは、白布が使われます。

これは、赤ちゃんや死者があの世とこの世を行き来する際に、太陽の光を避けるために白布を用いたのと同じ理由で使われているとされています。

 

葬儀とまじない

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葬儀に関する儀式では、死んだ人が再び舞い戻ってこないように、おまじないを行う習慣がありました。

そのおまじないとは、死者が使っていた茶碗を割る風習です。

これは、死者が毎日使っていた茶碗には、その人の念が強く残っているので、茶碗に残った念に向かって死者が戻ってこないようにするためだと言われています。

 

日本人と信仰

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仏教が伝来する前から、日本人には自然を信仰する習慣がありました。

現世で人間だったとしても、次は動物や鳥に生まれ変わることがあると考えられていました。

仏教伝来後は、輪廻転生の考え方が徐々に庶民の間で広まります。

生きとし生けるものは、死んだ後も様々なものに生まれ変わって生き続けると考えられるようになりました。

仏教では、たとえ死んでも地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の「六道」を転生し続けると考えられています。

こうした自然信仰や仏教の影響で、あの世とこの世は行き来するものという考え方が、日本人の間では自然に浸透していったのだと思います。

誕生・結婚・葬儀は、生と死の境界を通過する儀礼だったんです。

冠婚葬祭の儀礼の主役となる人は、あの世とこの世の狭間にいると考えられていたようです。

 

参考文献

儀式論

新嘗のこころ―勤労感謝の日から新嘗祭の復興

氏神さまと鎮守さま 神社の民俗史 (講談社選書メチエ)

日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―

忘れられた日本人 (1984年) (岩波文庫)