マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

拍手をしても良い相手と、控えた方が良い相手

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今日は会社で入社式がありました。

入社式で新入社員達は、緊張の面持ちで静かに社長の話を聴いていました。

社長の話が始まる前に、総務の担当者から新入社員に注意事項を説明してもらいました。

注意事項の中に、

「社長挨拶が終わった際、拍手をしてはいけません」

というものを盛り込んでもらいました。

社長挨拶の後に拍手をしても良いかどうかは、会社によって異なると思います。

今回は、そんな「拍手をしても良い相手と、控えた方が良い相手」について書いてみます。

 

 

 

魏志倭人伝と拍手

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両手を合わせる際に音を出す「拍手」。

音を出す理由は、神への感謝や喜びを表すためだとか、神を呼び寄せるためだとか、邪気を祓うためだと言われています。

古来、日本人は拍手をする習慣がありました。

拍手に関する記録で一番古いものは、『魏志倭人伝』のようです。

魏志倭人伝の中に、

「見大人所敬 但搏手以當脆拝」

と書かれた箇所があります。

これは、「倭人は、貴人に対して跪いて拝礼せずに、手を打つ」という意味です。

邪馬台国が隆盛を誇っていた時代には、神だけでなく、貴人に対しても拍手する習慣があったようです。

 

天皇と拍手

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『日本書紀』の中に、持統天皇について書かれた部分があります。

そこでは、新しく即位した天皇に対し、群臣が拝礼と拍手をするようになったという記載があります。

天皇を神に見立てるようになり、以後即位式に柏手が取り入れられるようになりました。

奈良時代になると、天皇の即位宣命が読み上げられた後に、参列した群臣が拍手で応えたことが、平安時代に編纂された『内裏儀式』という書物に記録されています。

この『内裏儀式』によると、天皇の即位式において、群臣は跪いた状態で32回手を打ち、即位を祝ったそうです。

同じく平安時代に編纂された『日本後紀』の記録を調べてみると、799年(延暦18年)の元旦に関することが書かれています。

海外からの使者が参列していたため、天皇に対する拍手が省略されたと記録されています。

日本書紀、内裏儀式、日本後記といった書物から、貴人に対して拍手をするというのは日本独自の作法だったのかもしれないと読み取れます。

なお、平安時代以降、貴人に対して拍手する習慣はなくなりました。

 

観劇と拍手

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明治時代以前は、能や歌舞伎、狂言などで観客が拍手する習慣はありませんでした。

観劇中に音を立てることは、失礼なことだとされていたようです。

明治になり、欧米人が観劇の最後に拍手をしていたのを見て、日本で拍手の習慣が広まったとされています。

 

拍手に込められた「批評」

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拍手には、批評の意味が含まれています。

音楽会や観劇などの終わりに拍手するのは、

「素晴らしかった」

「感動した」

という批評の表れだと思います。

その証拠に、欧米では不評の音楽会や観劇では、拍手が起こらないこともあります。

 

目上の人や、高貴な人に対して拍手しても良いのか

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邪馬台国の時代から、奈良時代頃までの日本では、神や貴人に対して拍手する習慣がありました。

平安時代から江戸時代にかけては、貴人に対して拍手することはなくなり、観劇においても拍手することはありませんでした。

明治になってから、観劇後に拍手する習慣が日本に広まりました。

明治以降に広まった拍手の習慣は、あくまでも演奏会や観劇後に行う拍手です。

目上の人や貴人に対する拍手は、失礼に当たると考える人は今も多くいます。

例えば、皇族の方がスピーチした際、拍手するとことは、そのスピーチの出来がよかったと「ほめた」ことになると考えられます。

目上の人に対して、「ごくろうさま」と言っているようなものかもしれません。

状況次第では、貴人に対して拍手することがふさわしい場面もあるのかもしれませんが、「批評」の意味に捉えられるような場面で拍手するのは控えておいた方が良い気がします。

 

ヒトはなぜ拍手をするのか―動物行動学から見た人間 (新潮選書)

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拍手しすぎる日本人 行列してまで食べないフランス人 (講談社+α新書)

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現代語訳 魏志倭人伝 (新人物文庫)

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日本後紀(上)全現代語訳 (講談社学術文庫)

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