マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

テーブルナイフの先が丸く、切れ味が悪い理由

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古本屋で見つけた、林房雄の小説『青年』を読んでいます。

 

青年・文明開化 (林房雄コレクション (3))

青年・文明開化 (林房雄コレクション (3))

 

 

明治維新の頃をテーマにした小説なのですが、高杉晋作の心理描写がとても面白く、一気に読み進めています。

小説の中で、若き日の井上馨と伊藤博文が、イギリスの外交官アーネスト・サトウを食事に招待する場面がありました。

洋式のカトラリーがないので、日本の短刀を使って食事するという場面が描かれていました。

なんだか食べにくそうだな、と思ったのですが、よく考えたら昔の西洋では武器として使われていたナイフを使って食事するのが一般的だったことを思い出しました。

そんなわけで今回は、テーブルナイフについて書いてみます。

 

 

 

肉の切り分け方の変化

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テーブルナイフは、カトラリーの中で一番歴史が古いものです。

中世以前のヨーロッパでは、武器として持っていたナイフを使って肉の塊を切り取り食べていました。

17世紀頃のヨーロッパでは、手とナイフを使って食事をするのが普通でした。

大きな肉のかたまりを食卓に出して、その場で肉を切り分ける習慣が徐々に変化し、切り分けた肉を食卓に持ってくるという習慣が浸透した時代だと言われています。

動物を丸焼きして、各人がナイフで切り取って食べるスタイルは、集団生活をしながら自給自足の生活をしていた時代には向いていたんだと思います。

時代が進むにつれ、家族の規模が小さくなると、動物を一頭まるごと食べることも少なくなります。

そのため、切り分けられた肉が食卓に運ばれてくるようになったと言われています。

 

英国式の切り分け文化

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ヨーロッパの中で、イギリスだけは料理された動物を丸ごと食卓に持ってくる習慣が残りました。

現在も、イギリスの植民地だったアメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは、テーブルで肉を切り分ける文化が残っているようです。

たとえば、クリスマスに七面鳥を丸焼きして、主人が肉を切り分ける場合は多くあります。

また、ローストビーフを食卓で主人が切り分けるのも一般的のようです。

 

テーブルナイフの先が丸い理由

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フランスで1600年頃に発行された料理の本を読むと、当時のナイフは切れやすく尖ったものだったようです。

1630年頃に、切れにくく先の丸いナイフが食卓で使われるようになりました。

当時のフランスでは、食事が終わった後に先のとがったナイフで歯を掃除する人が多かったそうです。

これを不快に感じる人も多かったらしく、大変無作法なこととされていました。

ある日、当時フランス国王だったルイ13世の宰相・リシュリューが、大法官のセギュイエを食事に招待しました。

食事が終わった後、なんとセギュイエもナイフの先で歯を掃除しはじめたそうです。

これに驚いたリシュリューは、自宅のナイフの先を全て丸くするよう、給仕長に命じました。

更に1669年、リシュリューはルイ13世の名のもと

「いかなる地位にある者も、先の尖ったナイフを刃物商へ持ち込み、丸くしなければならない。また、今後刃物商は先の尖ったナイフをつくったり、販売することを禁じる」

といった法律も制定しました。

それ以降、世界中のテーブルナイフは先は丸いものが主流になったそうです。

 

テーブルナイフの切れ味が悪い理由

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鋭いナイフは、肉を切り分けるための道具であると同時に、武器でもありました。

食料が貴重だった時代は、切り分ける肉の量で喧嘩が起こり、ナイフを振り回すこともあったようです。

これを防ぐために、肉を食卓に持ってくる前に切り分ける必要がありました。

各人の前に並べるナイフは切れ味が悪く、刃のないものに変化したことによって、力を入れて切らなくてはならなくなりました。

また、テーブルナイフの使用方法についても、細かいマナーが決められました。

例えば、

  • 顔に近い場所に置かないようにする
  • ナイフを手渡しする際は、柄を相手に向けて渡す
  • ゆで卵やポテトのように、丸いモノには使ってはいけない

などです。

 

カトラリーの語源

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カトラリーは、英語でcutleryと書きます。

綴りからも「切るもの・ナイフ類」が由来となっているのが想像できます。

昔は鉄でつくられていたテーブルナイフは、時代と共に銀・金・ステンレス・プラスチックなどの素材に変化してきました。

高価な素材や切れにくい素材を使うことも、食事を美味しく美しく食べるために必要だったんだと思います。