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マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

「心遣い」や「信頼関係」は、「襖(ふすま)」が育んでくれたのかもしれない

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オフィスのセキュリティって、時代を追うごとに強化されつつありますね。

20年くらい前は、飛び込み営業にやって来る人も多かった気がしますが、最近は入口がオートロックになっているオフィスビルが増えた気がします。

同じ会社の中であっても、入退室管理システムが導入されていれば、IDカードでロックを解除して出入りしなきゃいけませんよね。

居住用のマンションでも、オートロックの物件が増えましたね。

情報や安全を守るためには、セキュリティを強化するのは必要なことだと思っています。

でも、それで失ったものもあるんじゃないかと思いまして。

そんなわけで、今日は作法と言えば多くの人がイメージする「襖(ふすま)」について書いてみたいと思います。

 

 

 

襖の開け閉て(あけたて)

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「作法」という言葉を聞くと、襖の開け閉て(あけたて)やお辞儀の仕方なんてものをイメージする人が多いと思います。

襖を開ける際は、3つの動作で開けるのが正しい作法である、なんてことを聞いたことがあるんじゃないでしょうか。

正しい襖の開け方は、最初に開けようとする襖の正面に座ります。そして把手(とって)に近い方の手を把手にかけ、掌が入る程度に少し開けます。

その手を襖の縁に沿って下げながら、体の中央付近まで襖を開けます。

その後、もう1方の手で体が通れる程度まで襖を開けるのが、正しい襖の開け方とされています。

でも、こんな襖の開け方を実践する機会って、普段の生活ではほとんどないのではないでしょうか。

 

襖とプライバシー

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襖でプライバシーを保護するのって、とても難しい気がします。

中にいる人の話し声は外に漏れやすいし、鍵もかかりませんよね。強くぶつかったりしたら、すぐに倒れてしまいます。

哲学者の和辻哲郎氏も、『古寺巡礼』という本の中で、襖について次のように書いています。

「襖は、それをへだてとして使用する人々が、それをへだてとして相互に尊重し合うときにのみ、へだてとしての役割を果たすものである」

古寺巡礼 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

 

頑丈なドアや鍵のかかる扉で、個人のプライバシーを守る文化で育ってきた外国人は、襖を見てびっくりしたんじゃないでしょうか。

 

襖は平和の象徴

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昔の日本は平和だったんだと思います。

襖だけでなく、鍵すら使われていなかった時代が長く続いていました。

障子にしてみても、室内が明るければ中の人影が映っちゃいますよね。それに、指で穴をあければ簡単に中を覗けてしまいますしね。

そんな「へだて」の数々が一般的だった時代は、心遣いや信頼関係が今よりも大切にされていた時代でした。

 

襖が一般的だった時代の「心遣い」

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襖が「へだて」として一般的だった頃は、襖を開ける側も開けられる側も、どう振る舞えば相手が不快な思いをしないかを考えて生活していました。

部屋の中で話し合いをしている場合は、さりげなくその場を外したり、近寄らないのが礼儀とされていました。

立ち聞きしようにも、襖や障子で隔たれているだけであれば、部屋の中にいる人も近くに人がいるかどうか、気配を感じることが簡単にできたと思います。

だからこそ、3つの動作で襖を開け閉めする「襖の開け閉て」という作法が確立されたんだと思います。

マナーや作法というのは、自分が恥をかかないために身に付けるものではなく、相手に不快な思いをさせないために身に付けるものですからね。

 

セキュリティの強化で失われたもの

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襖がへだてとして使われている家で育った子供は、自然と相手に対する心遣いが養われていたのではないでしょうか。

『サザエさん』を観ていると、波平さんがカツオ君やサザエさんをお説教する場面がありますよね。

お説教している部屋を、ワカメちゃんやタラちゃんがこっそり覗いている描写はありません。

もしかすると、本当は覗いているのかもしれませんけどね。

襖や障子でへだたれた部屋の中で、大事な話をしている際は、さりげなくその場を外すという「心遣い」が、自然に身についていたんだと思います。

波平さんの「バッカもーん!!」という大声は、流石に襖の外に漏れているでしょうけどね。

襖のある家庭では、そんな心遣いや信頼関係が育まれていたんだと思います。

家庭で身に付いた心遣いがあれば、社会に出ても円滑な人間関係が築けられるのではないでしょうか。

信頼関係で成り立つ社会であれば、セキュリティを強化する必要はないのかもしれませんね。