マナースタイル★MannerStyle★

ビジネスコンサル兼マナー講師が、「マナー」「礼儀」「作法」「しきたり」の由縁について、調べたことをまとめたブログ。単なる備忘録です。

マナーの仕事をしていると、「トランプ大統領」よりも「クーリッジ大統領」の話題に触れる機会が多い

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最近、ニュースではアメリカのトランプ大統領の話題が尽きないですね。

大統領令についてや、それに対する識者の意見の数々、興味深いです。

私はマナー講師や経営コンサルの仕事をしているのですが、講義でトランプ大統領の話題に触れる機会はほとんどありません。

でも、クーリッジ大統領の逸話に触れる機会は、年に何度もあります。

せっかくなんで、そんなクーリッジ大統領の逸話について書いてみます。

 

 

 

クーリッジ大統領が活躍した時代

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アメリカの第30代大統領、ジョン・カルビン・クーリッジ・ジュニア(John Calvin Coolidge, Jr.)。大統領在任期間は、1923年8月3日から1929年3月4日だったそうです。

日本では、あまり馴染みのない大統領ですよね。

写真を見ても、名前と顔が一致する人は少ないのではないでしょうか。

カルビン・クーリッジ - Wikipedia

当時のアメリカは、第一次世界大戦が終わり、「黄金の1920年代」と呼ばれるほどの経済発展と技術革新の時代でした。

その発展を支えたのが、クーリッジ大統領だったんです。

当時活躍していた有名人には、チャップリンやベーブルース、アル・カポネといった人達がいました。

クーリッジ氏が大統領に就任した1923年は、日本では関東大震災が発生した年でした。1926年は、日本の元号が大正から昭和に変わった年でもあります。

 

無口な大統領

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Wikipediaで調べても、クーリッジ大統領に関する情報はほとんどありません。「無口なので『寡黙なカル』と呼ばれていた」とか「悪戯好きだった」といったことくらいしか分かりません。

アメリカでも、近年まではほとんど話題になることがない大統領だったそうです。

そんなクーリッジ大統領ですが、マナーに関して有名な逸話があるんです。

 

有名なアメリカンジョーク

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ある晩、クーリッジ大統領は、地元の友人たちをホワイトハウスの夕食に招待しました。

招待客たちは、ホワイトハウスという場所と、豪華な夕食に緊張しっぱなしです。

みんな恥をかきたくないので、どうすればいいか考えました。

結局、「クーリッジ大統領の作法を真似していれば間違いないのではないか」とうことになり、大統領が料理を食べる仕草や、グラスを持つ仕草を、招待客はそのまま真似していました。

コース料理が全て終わり、食後のコーヒーが出るまでは、何も問題が起きることはありませんでした。

みんな、緊張しつつも楽しい夕食の時間を過ごしていました。

最後にコーヒーが出てくると、大統領はおもむろにコーヒーカップを手にし、自分の受け皿にコーヒーを注ぎ始めました。

招待客たちも、疑うことなく真似して受け皿にコーヒーを注ぎました。

大統領は、更にクリームや砂糖を受け皿に入れました。

招待客たちも、同じようにクリームと砂糖を受け皿に入れました。

大統領はこの受け皿をどうするつもりなのか、招待客たちが大統領の次の行動に注目しました。

すると大統領は、おもむろに身をかがめ、猫のために床に受け皿を置いたそうです。

 

この話をすると、初めて聞いた方の反応が綺麗に2つに分かれてしまうんです。

笑っちゃう人と、「あれっ?」って顔をする人に。

 

受け皿(ソーサー)の使い方

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レストランでコーヒーを注文した場合、受け皿(ソーサー)がついてくることが多いと思います。

受け皿というくらいだから、コーヒーがこぼれてもテーブルやテーブルクロスを汚さないために使うものです。

 でも、18世紀頃のイギリスやフランスでは、熱いコーヒーや紅茶を冷まして飲むために、受け皿に移してから飲むという習慣があったそうです。

探してみると、当時の版画や絵画に、受け皿に移してコーヒーを飲む姿が描かれているものがありました。

この受け皿の使い方を聞いたことがある方は、クーリッジ大統領の逸話を聞くと「あれっ、間違ってないんじゃないの? 受け皿に移してもマナー違反じゃないのでは?」と感じるようです。

1920年代は、既に20世紀に入っている時代です。20世紀のアメリカで、コーヒーを受け皿に移して飲む人がどれだけいたかは分かりませんが、少なくともホワイトハウスの夕食でふさわしいマナーではなかったようです。

ヨーロッパでも、受け皿に移して飲むのは、一部の労働者階級での習慣とされていたようで、一般的ではなかったようです。

受け皿に移して飲むのは、無作法だと思われていたのかもしれませんね。

 

TPOに合わせて異なるマナー

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ヨーロッパとアメリカという国の違い。

18世紀と20世紀という時代の違い。

労働者階級がコーヒーを飲む機会が多いと思われるカフェと、ホワイトハウスという場所の違い。

時と場所に応じて、必要なマナーが異なるということが、クーリッジ大統領の逸話から深読みできます。

マナーに興味を持ってもらうための掴みとして、結構重宝してる逸話なんです。

 

クーリッジ大統領はどんな人物だったのか

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インターネットでは、寡黙で悪戯好きといった程度の情報しか集めることができないクーリッジ大統領ですが、どんな業績を残した大統領だったんでしょうか。

クーリッジ大統領に関する、日本語の本は見つけることができなかったんですが、こんな本を持っています。

Why Coolidge Matters: Leadership Lessons from America’s Most Underrated President (NONE)

Why Coolidge Matters: Leadership Lessons from America’s Most Underrated President (NONE)

 

この本によると、クーリッジ大統領の在任中に、アメリカの生活水準は大幅に向上したそうです。

アメリカ国内の失業率は最低、自動車産業は好景気に沸き、エジソンやフォード、ディズニーといった人たちが活躍した時代でした。

1923年にクーリッジ氏が大統領に就任して間もなく、日本で関東大震災が発生しました。

その際、世界中から救援物資や義捐金が日本に届けられたのですが、クーリッジ大統領は震災のニュースを耳にすると、すぐに大統領令を発令し、日本への大規模救援物資の援助を行ったそうです。

その時、日本ではまだ対策本部も立ち上げることができていませんでした。

救援物資の援助以外にも、義捐金の援助、大正天皇へのお見舞い電報、大規模救助隊の編成など、支援国中最大規模の援助を迅速に行いました。

 

東日本大震災が発生した2011年、アメリカは「トモダチ作戦」と銘打って、日本を支援してくれました。

それよりも100年近く前に、日本はクーリッジ大統領の迅速な「大統領令」によって、支援を受けていたんですね。

 

関東大震災で、クーリッジ大統領の出した「大統領令」は、多くの命を救いたいという気持ちが込められた大統領令だと思います。

最近は「アメリカファースト」な大統領令をよく目にする気がします。

これから数年以内に、万が一世界のどこかで大規模な災害や緊急事態が発生した際、国や人種、宗教を問わない「人命優先」の大統領令は、果たして強行発令されるんでしょうかね。